拠点形成プロジェクト
21世紀課題群と東アジアの新環境:
実践志向型地域研究の拠点構築
プロジェクト代表者
三好 恵真子
大阪大学大学院人間科学研究科・教授
21世紀における「大国」としての中国台頭の直接的契機は、歴史的に鑑みても、20世紀第四半期の中華人民共和国の猛然たる体制転換の中に存在していると考えられます。それは同時に、伝統的中国文明を基盤とした東アジア諸国家の文化空間の新たな広がりと変容から、中国自身が絶えず制度刷新と文化創造のためのダイナミズムの供給を受けてきた所以であると理解できます。さらに、中国及びそれを取り巻く周辺諸国との連動的関係の拡大・深化は、もはやグローバルな国際関係の基軸の一つを構成しうるものとして展開し、また長期的な国家戦略の最重要視すべき外的要因としての米国の外交政策の動向分析も決定的な意味を持つようになったのです。
その一方で、「改革開放政策」以来、中国は新たな社会転換期に突入したものの、急速な工業化や都市化により、自然環境への負荷が増大し、深刻な環境汚染が中国全土に広がり、加えて越境汚染の拡大や新型感染症の到来は、グローバルな視野からも注視され、緊張関係を高めております。ただし、2022年は日中国交正常化から50年の節目にあたり、こうした21世紀課題群に対する「一衣帯水」の隣国としての連携・協力体制の強化は必然性を色濃くし、とりわけ若手研究者育成に根差した大学間による国境の相対化が望まれていることは間違いないでしょう。
そこで、本プロジェクトでは、非対称戦争とテロリズム、新型感染症と公衆衛生、環境問題や核管理、国境紛争と歴史問題、あるいは少子高齢化と社会保障など、緊急性を要する21世紀課題群と東アジアとの関係性に着目しながら、若手研究者の育成を軸芯に据えた現代中国研究の「対話型」研究プラットフォームの構築を目指していきます。
本プロジェクトの代表および参画メンバーが中心となる、有志の教員による「大阪大学中国文化フォーラム」は、2007年に組織化され、日本・中国大陸・台湾・韓国の国境を越えた学術交流である国際セミナー「現代中国と東アジアの新環境」(会議言語中国語)を十数年間にわたり主宰しており、息の長い人的交流を通じた対話の基盤を育んで参りました。本プロジェクトでは、この貴重な資源や濃厚な実績を多分に活かしつつ、地域研究の学際性を「近現代の軌跡と前近代からの逆照射」という歴史的射程から捉えることにより、更なるグローバルな文理融合的課題を、歴史学を機軸とする地域研究の総合化(課題群の整序と認識枠組の再検討)における不可分の領域へと再配置し、実践志向型地域研究へと昇華させることを試みたいと思います。
具体的には、これまで類似した問題関心を持ちつつも、相互に刺激し合える交流空間が欠如している現状を打破するための建設的な提案として、国際セミナー開催を中心に、学生・若手研究者の積極的な参加を促す多様な企画を立案するのと同時に、サイバースペース上に、様々な論点を題材としたグローバル・ダイアログ・システムを整備しながら、「研究と教育の有機的連携」の活性化を目指します。すなわち「21世紀課題群と東アジアの新環境」を切り口として、新たな領域横断的研究・教育のプログラムの創成を追求しつつ、その成果をより豊かな国際関係の創出と提案に向けて活かせることを希求します。
プロジェクト構成員 | ||
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学内 | 許 衛東 | 大阪大学大学院経済研究科・准教授 |
高橋 慶吉 | 大阪大学大学院法学研究科・教授 | |
豊田 岐聡 | 大阪大学大学院理学研究科・教授 | |
宮原 暁 | 大阪大学大学院人文学研究科・教授 | |
小林 清治 | 大阪大学大学院人間科学研究科・准教授 | |
林 礼釗 | 大阪大学大学院人間科学研究科・特任研究員 | |
胡 毓瑜 | 大阪大学大学院人間科学研究科・助教 | |
岡野 翔太 | 大阪大学・レーザー科学研究所・特任研究員/ 大阪大学人文学研究科・招へい研究員 |
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学外 | 鄒 燦 | 中国南開大学日本研究院・副教授 |
江 沛 | 中国南開大学歴史学院・教授 | |
許 育銘 | 台湾国立東華大学歴史学系・副教授 | |
柳 鏞泰 | 韓国ソウル大学校歴史教育科・教授 | |
周 太平 | 中国内モンゴル大学モンゴル学学院・教授 | |
丸田 孝志 | 広島大学人間社会科学研究科・教授 | |
福田 州平 | 香港大学専業進修学院・人文及法律学院・学院助理講師 | |
田中 仁 | 公益財団法人東洋文庫 研究部 研究員 (大阪大学・名誉教授) |
キーワード | 東アジア、実践志向型地域研究、文理融合、国際連携、若手研究者育成 |
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