拠点形成プロジェクト

2021年度 教育プログラム開発型

社学連携型・高度副プログラム
「日本におけるマイノリティ教育の理論と実践」の開発

プロジェクト代表者
岡部 美香

大阪大学大学院人間科学研究科・教授

誰一人取り残さない社会の実現をめざして国連サミット(2015)で採択されたSDGsの目標の一つに「すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する」(目標4)ことが掲げられている。これを受け、日本でも2016年に「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」(教育機会確保法)が公布され、全国で夜間中学校の設置・整備が進められているほか、何らかの困難や特別なニーズを抱える児童生徒への教育・支援および課題の多い学校への支援に力が注がれている。とはいえ、まだ成果は十分とは言えない。

特に近年、グローバル化の進展に伴って、日本の学校に通う児童生徒のなかでも多国籍化、多文化化が進んできた。学校教育には、そうした児童生徒に対する日本語・日本文化の教育のみならず、多言語による教育・福祉・生活情報の提供と学校内外における学習・生活の支援、母語で話す機会や独自の文化的生活を営む権利の保障などが要請されている。しかしながら、この要請に十分に応え得る知識・技能・社会的/人的ネットワークをもつ学校教員・支援員はまだ少ない。外国にルーツをもつ児童生徒へのこうした教育・支援が現代日本の教育における焦眉の課題であることは、文部科学省の報告「外国人児童生徒等の教育の充実について」(2020)でも指摘されているように明らかである。

そこで本プロジェクトでは、外国にルーツをもつ児童生徒に対する教育や学習・生活支援の現状と課題およびその課題解決に向けた取り組みについて高度な知識・技能を有し、さまざまな教育の現場でそれらを十全に活用しつつ、また効果的にネットワークを駆使して協力体制を敷きつつ、そのような取り組みに尽力できる人材の輩出をめざして、前期課程大学院生を主な対象とする高度副プログラム「日本におけるマイノリティ教育の理論と実践」を開発する。

夜間中学の授業の様子①
夜間中学の授業の様子②

従来、大阪大学・人間科学研究科の修了生は、現代日本の教育事情、とりわけ外国にルーツをもつ児童生徒の教育や学習・生活支援の現状と課題には精通しているが、日本語教育や母語保障に関する知識・技能・ネットワークは十分にはもっていなかった。他方、大阪大学・言語文化研究科の修了生は、日本語教育や母語保障に関しては専門知識・技能を有するが、国内外の教育事情や時事問題については詳細に学ぶ機会がほとんどなかった。本プログラムでは、人間科学研究科・言語文化研究科(2022年度より人文学研究科)・日本語日本文化教育センターの教員が協力することによって、またさらに大阪府教育庁・守口市教育委員会・大阪府立大阪わかば高等学校・守口市立守口さつき学園夜間学級と連携してフィールドワークを実施することによって、現代日本の学校教育の課題に専門的な観点から適切かつ効果的に対応することのできる人材を育成・輩出し、人文・社会科学系大学院の教育研究の社会実装を図る。

プロジェクト構成員
学内 榎井 縁 大阪大学大学院人間科学研究科・教授
櫻井 千穂 大阪大学大学院人文学研究科・准教授
加藤 均 大阪大学日本語日本文化教育センター・教授
松岡 里奈 大阪大学日本語日本文化教育センター・特任講師
協力機関・
連携機関
大阪府教育庁
守口市教育委員会
大阪府立大阪わかば高等学校
守口市立守口さつき学園夜間学級
大阪府立福井高等学校
大阪府立西成高等学校
キーワード マイノリティ教育、教育格差是正、外国ルーツの生徒、日本語教育、母語保障