イベント
大阪大学グローバル日本学教育研究拠点主催 /
「国際日本研究」コンソーシアム共催
国際シンポジウム
SHARED AUTHORITY ―歴史を描くのは誰か―
本シンポジウムの基盤となっているのは、本拠点が採択・支援する「拠点形成プロジェクト」の一つ「オーラルヒストリー資料の保存・公開・活用に関する共同研究」です。本学の安岡健一准教授を代表者とするこの取り組みは、2022年度に採択され今年度が事業の最終年度となります。
開催報告
安岡健一(大阪大学大学院人文学研究科准教授)
2024年8月24日(土)、アメリカからオーラルヒストリーとパブリックヒストリーの代表的研究者の一人である、マイケル・フリッシュ氏を招へいし、国際シンポジウム 「SHARED AUTHORITY―歴史を描くのは誰か」を開催した。ハイブリッド形式で開催した本会には、対面・オンラインあわせて約140名の登録があり、高い関心が寄せられた。
シンポジウムを主催した大阪大学グローバル日本学教育研究拠点では、筆者が代表を務めるかたちで拠点形成プロジェクト「オーラルヒストリー資料の保存・公開・活用に関する共同研究」を2022年度から2024年度にかけて進めており、本シンポジウムはプロジェクト最終年度の成果でもある。開催にあたっては、共催団体として「国際日本研究コンソーシアム」から財政的支援を受けるとともに、日本オーラル・ヒストリー学会、パブリックヒストリー研究会から後援をいただいた。
フリッシュ氏の提起した、Shared Authorityという概念は、これまでは日本語圏の研究であまりなじみがなかったが、これを機にさまざまな議論がうまれることを期待している。フリッシュ氏には新たに加筆した原稿を提出いただき、また他の報告者・コメンテーターからも原稿を寄せていただき、2025年3月に刊行する予定の研究室紀要『日本学報』に特集として収録する予定である。ぜひそちらもご参照いただきたい。
開催にあたって掲げた趣旨は、以下のとおりである。
“1990年代以後は「記憶の時代」とも言われ、歴史的過去をめぐる国際的なコンフリクトが頻発している。それは同時に、歴史が持つ公的な意義への再認識がすすんだことを意味し、デジタル化を通じた歴史資料の共有と探求への市民参加は新たな可能性をも提供している。危機と機会の両面を有する現在において、歴史を誰が、いかに描くのかは、そもそも「私たち」とは誰かという問題と結びつく切実な主題であり、議論を積み重ねることが必要である。
実際、人文学・社会科学の分野において歴史叙述のあり方への反省を伴う潮流がいくつもうまれてきた。しかしながら、これらの潮流は、いままでの学術的な発展や蓄積の違いを反映して、必ずしも有機的に結びついてきたとはいえない。そこで、今回の国際シンポジウムでは、SHARED AUTHORITYという概念を提起し、学問の変革を理論的に支えてきた研究者であるマイケル・フリッシュ氏を招へいする。これまで十分に翻訳されてこなかった、その実践の経緯と現在を紹介していただくと共に、日本側での実践を共有し応答を試みる。
具体的には、パブリック・ヒストリー研究、オーラルヒストリー研究、デジタル人文学の諸分野をそれぞれリードする研究者をお招きし、それぞれの歴史と現状についてのご発表をいただく。
2002年に設立され、結成20年を迎えた日本オーラル・ヒストリー学会から現会長である石川良子氏(立教大学)に登壇いただく。日本におけるパブリックヒストリーについて、2019年に発足したパブリックヒストリー研究会の呼びかけ人である菅豊氏(東京大学)にご登壇いただく。また、デジタル人文学の分野から、菊池信彦氏(国文学研究資料館)にご報告をいただく。
また、コメンテーターとして、五月女賢司氏にご登壇いただき、議論の射程を広げたい。
本シンポジウムを通じて、広い意味での関係者が出会い、他国の実例に学びながらより創造的な関係を構築し、次代の人文学・社会科学の発展を展望したい”。





プログラム・タイムスケジュール | |
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10:00~10:20 | 開会の挨拶(宇野田尚哉副拠点長/大阪大学大学院人文学研究科教授) 趣旨説明(安岡健一/大阪大学大学院人文学研究科准教授) 司会:福島幸宏(慶應義塾大学准教授) |
10:20~11:20 | 第1部 キーノート・スピーチ講演者 マイケル・フリッシュ(バッファロー大学名誉教授) |
11:20~12:15 | コメント 安岡健一、質疑応答 |
12:15~13:30 | 〈休憩〉 |
13:30~16:25 | 第2部 パネルセッションパネリスト 菊池信彦(国文学研究資料館准教授) 石川良子(立教大学教授) ディスカッサント |
16:25~16:30 | 閉会の挨拶(岩井茂樹副拠点長/大阪大学日本語日本文化教育センター教授) |