Incubator-Supported Projects
Research on the Kyoto School and Post-Kyoto School Philosophies of Science and Technology
プロジェクト代表者
檜垣 立哉
大阪大学大学院人間科学研究科・教授
日本における科学哲学や技術哲学の導入は、オリジナルな哲学の日本での形成であった京都学派にまで遡る。京都学派創設期の西田幾多郎や田辺元は独自の技術論・数理哲学的思考を展開したし、三木清などを経た技術哲学の展開は戦後思想にまで影響を及ぼした。戦後の下村寅太郎らの科学哲学への貢献は、現在の日本の科学哲学のあり方を考えるときにもきわめて重要なものである。科学論や技術論はいうまでもなく21世紀の哲学や思想の領域において意義深いものであり、同時にそれが日本においてどのような輸入発展の経路を辿ったのかを検討することは、日本における今後の思想のアクチュアリティーを検討する際にも不可欠なこととおもわれる。
今回のプロジェクトにおいては、日本の研究機関に勤務する外国籍の日本哲学研究者や若手女性研究者・若手特任研究員などを軸にして、焦点を日本の科学論・技術論に絞り込み、国際的な成果発信をおこなうことを目的とする。
京都学派研究は、これまでも様々な角度からおこなわれてきたし、日本における近代哲学思想のオリジナルな展開として、それ自身グローバル日本学の枠内でも研究対象として設定すべき主題とおもわれる。もちろん京都学派はそれ自身が多面性をもち、その哲学思想の内容も政治性の評価も多岐にわたるが、一面では技術哲学・科学哲学の日本的形成として、戦後までおおきな影響をもってきた歴史がある。21世紀の現在、日本学のみならずグローバルな思想の潮流において技術論や科学論のあり方が再検討され、ヨーロッパ近代に軸足を置きながらもそれを様々なローカルな場面において展開することが模索される状況下で、京都学派およびそれ以降の技術論や科学論の検討は、そのヨーロッパ的学問のアジア的世界への導入としての先駆性や、現在における日本の技術科学思想への影響という観点からも意義をもつといえる。
本申請は拠点形成型として提出するように、基本的には京都学派およびポスト京都学派の技術哲学や科学哲学の研究を今後も継続していくための土台作りとして計画される。本申請に関係している研究者の多くは、ヨーロッパ日本哲学研究ネットワーク(ENOJP)などの会合に参加し、それぞれ発表を積み重ね、またそれを契機に知己を得ている。今回のように、こうした「拠点化」をおこなうことによって、ENOJPへのセッションとしての参加、またENOJPの機関誌そのほかにおいて、英語およびフランス語での論文投稿や、共著論文の企画、また本研究自身の総括としての共著の日英両語での刊行が目指される。
プロジェクト構成員 | ||
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学内 | 森田 邦久 | 大阪大学大学院人間科学研究科・准教授 |
山崎 吾郎 | 大阪大学COデザインセンター・准教授 | |
織田 和明 | 大阪大学人間科学研究科未来共創センター特任研究員 | |
学外 | DALISSIER Michel | 金沢大学国際基幹教育院任期付准教授 |
犬塚 悠 | 名古屋工業大学大学院工学研究科・准教授 | |
FERRARI Felipe | 四日市大学総合政策学部・准教授 |
キーワード | 京都学派、ポスト京都学派、科学哲学、技術哲学、日本哲学 |
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